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事業性融資の推進等に関する法律について 

弁護士ブログ

事業性融資の推進等に関する法律について 

弁護士 岩本 拓士

本年6月、企業価値担保権制度の創設を目的とする「事業性融資の推進等に関する法律」(一般には、事業性融資推進法と呼ばれています。)が参院本会議で可決され、成立しました。なお、本法は、成立から2年半以内に施行予定とされています。

企業価値担保権制度は、事業資産そのものを担保とすることを認める制度です。
これまでは、企業が銀行等から融資によって資金調達する場合、不動産等を担保にすることを求められることが多いために、不動産等の有形資産を有していない企業は融資により資金調達をすることが困難となっていました。しかし、企業価値担保権制度により、事業資産そのものを担保に供することができるため、有形資産を保有していない企業であっても融資による資金調達を行いやすくなると言われています。

企業価値担保権の設定は、債務者兼設定者と、企業価値担保権信託会社(企業価値担保権に関する信託業務を行う免許を受けたもの)との信託契約によって行われます。そして、企業価値担保権信託会社の信託業務を金融庁が監督することにより、企業価値担保権制度の適切な運用を確保する設計となっています。なお、銀行等は所定の届出を行うことにより、当該免許を受けたものとみなされますので、主に銀行が企業価値担保権信託会社をも担うことが予想されます。

企業価値担保権の実行がされた場合、裁判所により管財人が選任され、管財人が事業を継続するとともに、担保とした事業資産の換価、すなわち事業譲渡を進めていくこととなります。この際、担保権の実行に関わらず、事業の継続に必要な商取引債権や労働者への労働債権などは弁済をしてよいこととなっています。このように、担保権の実行によっても事業自体は継続しているため、雇用の維持も図られることとなります。

同法が施行されるまでに時間はありますが、今後における新たな資金調達の方法として着目すべきものと思います。


弁護士 岩本 拓士

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