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知ってるか知らないかで全然違う!最も身近な法律「民法」の改正

弁護士ブログ

知ってるか知らないかで全然違う!最も身近な法律「民法」の改正

~ 今回は「消滅時効」について ~

弁護士 仲世古 善樹

「民法」という法律の改正については、平成21年から議論されてきており、時々、新聞等で経過が報道されています。今年3月31日には、国会に民法の改正案が提出されました。
「自分には関係ない」。そう感じている方も多いかもしれません。
しかし、民法は、最も身近な法律であり、気付かないうちに、皆、民法に書いてある法律関係の当事者になって日常生活を送っています。平日は、仕事に行って【雇用契約】、帰りにビールとツマミをコンビニで買い【売買契約】、借りているマンション【賃貸借契約】に帰るという生活を送り、週末には、自動車ローン【消費貸借契約】で買った【売買契約】車で、あるいは友人からタダで一時的に借りた【使用貸借契約】車でどこかに遊びに行く、といった感じです。さらには、「婚姻」つまり結婚のことや相続のこと、「親族」の範囲などといった家族に関することを定めているのも民法です。

もっとも、身近だから分かり易いかというと、そうではなく、逆に、最も身近であるのにとても分かり難いというのが民法の問題でした。また、上記のような各契約のルールを定めた部分は、明治29年に制定されてからほとんど改正されていなかったので、今の日常生活に合っていないんじゃないの?という部分も多くあります。そこで、民法を改正しようとがんばっている訳です。
新しい民法(今は、まだ改正案ですが)の中身でご紹介したいところは沢山ありますが、ここでいっぺんにというのは無理ですので、結構馴染みがあると思われるものから一つ紹介します。それは、「消滅時効」です。
「消滅時効」は、一定の期間が過ぎてしまうことで、もう請求できなくなってしまう制度です。例えば、人にお金を貸したのですが、そのまま何年も経った後に請求したところ、相手から「もう時効だから返しません」と言われてしまい、もうそれでどうしようもなくなってしまう、ちょっとヒドイ制度です。
何年経ったら消滅時効が完成するのかについて、今の民法は、誰かにお金を請求すること(例えば、貸したお金を返してもらうこと)について原則10年としながら、職業別の例外を沢山規定しています。「飲み屋【飲食業】のツケは1年」というのは有名で、知っている方も多いと思いますが、この他にも民法は、例えば

  • 物を売ったときの売掛金は2年
  • 物を運んでもらったときの運送料は1年
  • ホテルとかの宿泊費は1年
  • 病院の治療費や薬局の薬代は3年
  • 車の修理をしてもらったときの修理代金や家を建てたときの工事代金は3年

などといった具合に色々言っています。因みに、弁護士費用は2年です。
改正案は、このような職業別の例外を全部やめて、原則として「権利行使できると知った時から5年」もしくは「権利行使できる時から10年」のいずれか早い方としています。お金を貸したり、物を売ったりした代金の支払い期限について、「●月末までに」と明確に定めた場合、通常、その期限が「権利行使できると知った時」になると思いますので、多くの場合、5年になるのだろうと思います。職業別の例外がなくなることで、すごく分かり易くなることは間違いありません。
ただ、消滅時効が完成するまでの期間については、民法以外の法律にも定めがあるので、民法が改正されても、注意が必要です。例えば、お給料は「2年」なのですが、これは民法ではなく、労働基準法という別の法律で規定されており、今のところ、民法改正に合わせて、労働基準法の規定が改正されるお話は出ていないようですので、このままだと、民法が改正されても2年のままになるでしょう。
今まで民法に興味がなかった方も、これから、民法改正のニュースにちょっと耳を傾けてみてください。よーく、よーく考えてみると、皆さんの日常生活に関係することが結構あることに気付くと思います。
以上

弁護士 仲世古 善樹
弁護士 仲世古 善樹

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