弁護士ブログ
弁護士の仕事2
弁護士 野﨑 正隆
本年1月に「弁護士の仕事」と題したコラムで、民事事件・刑事事件等の説明をしてから早9か月が経過してしまいました。冬将軍の到来ももうすぐでしょうか。季節の変わり目で体調を崩されませんよう皆様ご自愛下さい。
と、時候のご挨拶はこれぐらいにして、今回は前回のコラムで予告していた弁護士の仕事の一つである「会務」について触れたいと思います。
会務とは、端的に言えば、「弁護士会に関わる仕事」といえます。
ただ、具体的にどのような仕事をしているのか、を説明するには、まず、弁護士会とは何か、を説明しなければなりません(少々固い文章が続きますが、ご容赦ください)。
弁護士法1条1項は、弁護士の使命を「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」と規定しており、また、同法3条1項は、弁護士の職務を「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うこと」と規定しており、ときに弁護士は、国家権力と対峙して社会正義の実現を図る、といった事態も想定されます。
そのため、弁護士が、国家権力によって恣意的に身分を剥奪され、その職務を妨害されることになれば、前記使命を全うすることができません。
そこで、弁護士は、強制加入団体である「弁護士会」に所属しなければ、弁護士を名乗って業務を行うことはできず、また、弁護士登録の審査や弁護士に対する懲戒(最も重い処分は「除名」といって、弁護士の身分を失い、弁護士としての活動ができなくなるだけではなく、3年間は弁護士となる資格も失うというもの)も、弁護士会だけが行える、という「弁護士自治」が認められています。
そして、弁護士会の種類ですが、まず、「弁護士会は、地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならない」と法定されているため、北海道であれば札幌、旭川、函館、釧路の4つの弁護士会が存在します(「単位弁護士会」とも呼称されます)。
また、「全国の弁護士会は、日本弁護士連合会を設立しなければならない。」「弁護士、弁護士法人及び弁護士会は、当然、日本弁護士連合会の会員となる。」とも法定されているため、全国組織として「日本弁護士連合会(通称:日弁連)」が存在します。
更に、「同じ高等裁判所の管轄区域内の弁護士会は、共同して特定の事項を行うため、規約を定め、日本弁護士連合会の承認を受けて、弁護士会連合会を設けることができる。」と法定されており、地域ブロック単位で「弁護士会連合会」も設立されています(北海道では、前記4つの弁護士会から組織される「北海道弁護士会連合会(通称:道弁連)」が設立されています)。
このように見ると、全ての弁護士は、ある「単位弁護士会」に所属し、かつ、「日弁連」の会員でもある、ということになります。
そして、強力な弁護士自治が認められている結果、各弁護士会の組織運営も全て弁護士が担っているのですが、前記使命を果たすため、会内には様々な機関が設けられており、その一つが「委員会」という組織です(「〇〇本部」という名称の組織もあります)。
なお、私が所属する札幌弁護士会には、40以上の委員会が設置されており、例えば、大規模な消費者被害事件が発生した場合には、「消費者保護委員会」で対応を検討し、委員会所属の弁護士で弁護団を結成することもあります。
(札幌弁護士会が設立している委員会の詳細については、弁護士会HPをご参照ください。http://www.satsuben.or.jp/info/committee.html)
また、このような委員会は、単位弁護士会同様、「日弁連」や「弁護士会連合会」内にも複数設置されています。
そのため、多くの弁護士は、1つか2つ(人によっては4つ、5つ以上)の委員会に所属して、会議への出席、イベントの企画立案、事案の担当等の業務を行っています。
ちなみに現時点で私が所属している委員会は、以下の9つです。
- (日弁連)弁護士任官等推進センター
- (日弁連)司法シンポジウム運営委員会
- (札幌)司法改革推進委員会
- (札幌)司法改革推進本部
- (札幌)法律相談センター運営委員会
- (札幌)法律相談センター改革推進本部
- (札幌)道弁連定期大会実行委員会
- (道弁連)裁判官選考検討委員会
- (道弁連)弁護士任官推進委員会
多いように思われるかもしれませんが(いや実際に多いのですが・・・)、なかなか会議に出席できない委員会や、年に1、2回しか会議が開催されず、会議出席以外の負担があまりない委員会もあるので、(前回のコラムに記載したような本来の)弁護士業務に支障を来すまでには至っていません。会長や副会長等、理事者の方々はおそらく執務時間の半分以上は、弁護士会の仕事に費やしていると思われ、本当に頭が下がります。
ちなみに、弁護士会(=前記のような委員会)の仕事は、基本的に日当が出るわけではありませんので、法曹人口の急激な増加、という事象と相まって、近時は、委員会活動にあまり力を注がない方が増えてきたような印象を受けます。
私が入会した頃は、バリバリ仕事をされている弁護士ほど、このような会務を生き生きと精力的に担当されていた印象があり、会務に対する意識の低下が多くの会員に広がると、弁護士自治の崩壊へと繋がってしまうのではないか、と強く危惧しているところです。
私自身、弁護士となってこの秋で丸10年を迎え、会務の負担が増えつつあるところですが、若手の弁護士に会務のやり甲斐を示してあげられるよう、研鑽していきたいと考えています。
弁護士 野﨑 正隆