弁護士ブログ
【弁護士インタビュー】 「法曹を目指す人の負担軽減を」
弁護士会の「司法修習費用給費制存続緊急対策本部」において活動を続ける小林令弁護士に自身の体験も含めた司法修習費用の問題についてインタビューしました。
こばやし・つかさ 1986年 北海道亀田郡七飯町生まれ。
函館中部高校から中央大学法学部を経て北海道大学法科大学院を修了。司法試験合格後、修習費用の貸与を受けながら第66期司法修習を終えて弁護士登録。初年度より札幌弁護士会にて給費存続活動に携わり、現在に至る。札幌弁護士会所属。
趣味はマラソンとサッカー。
――司法修習費用が貸与制であることは司法試験の受験時代、あるいは受験以前から知っていましたか?
司法試験の受験時代には既に知っていました。ただ、実際のところ、受験時代は試験勉強に集中していましたし、貸与制もまだ開始していませんでしたので、恥ずかしながら、そこまで真剣にこの問題を捉えられていませんでした。
――司法試験に合格後、修習費用の貸与を受けることに抵抗感はありましたか?
ありました。司法(裁判官、検事、弁護士)は三権分立の一翼を担う職責を負っているにもかかわらず、国がその司法のための費用を支出しないという点で、制度として司法軽視の流れができていくのではないか、三権分立のチェック&バランス機能が維持できなくなるのではないかという危惧がありました。また、自身の生活面でも、大学、法科大学院と奨学金を利用していたため、さらに借金を重ねることについて大きな不安はありました。
――間もなく返還が始まると思いますが、どのような心境ですか?
前述のとおり、私は大学、法科大学院でも奨学金を利用していたため、その返済もあわせると、司法修習の貸与金返還の負担は、決して軽いものではありません。仕事でもプライベートでも様々な分岐点が重なる時期でもありますので、実際に返還が開始した際に自身がどのような状況にいるか予測できないというのが正直なところです。
――現在の貸与制の問題はどのような点にあると考えていますか?
やはり、経済的な理由から、志が高く、優秀で多様な人材を確保するのが困難となっている点にあると思います。現在の司法試験受験は、大学、法科大学院を修了する人が受けるのが主であり、その間に多額の学費がかかることに加え、合格後に給与が一切支給されないことで、裁判官、検事、弁護士になり給与を得るまでの間の経済的(及び時間的)な負担が非常に大きいです。法曹志願者は年々減少しており、実際に、経済的な理由のみで法曹への道をあきらめる人が出てきており、人手不足が深刻化しているといってもいいと思います。
――昨年12月、政府は新たな制度として「司法修習手当」を創設する方針を固めたようですが、これについてはどのように感じていますか?
政府が、ようやく司法の経済的負担及び人材確保という問題点を深刻にとらえ始めたと感じており、ひとまずほっとしています。やはり、三権分立の一翼を担う司法における人材育成も、国が適切に制度設計し、チェック&バランス機能を維持できるよう慎重に判断する必要があると思います。
それに伴い、多くの人が法曹に興味関心をもち、様々な人がこの業界に集まってくることを期待しています。
――経済的な問題によって挑戦を迷っている未来の法曹人に向けてメッセージをお願いします!
法曹の仕事は、実際に困っている人を目の前にして、自身の経験や知識を総動員し、その人にとって最善と思える方策を自らの判断で行い、実行するという、大変やりがいのある仕事です。また、法曹となった者は、1年目であろうが10年目であろうが30年目であろうが、対等な立場で議論し、依頼者のために闘いますので、非常に自由な気風のある業界でもあります。「おかしいことはおかしい」と、胸を張って主張できる、とても魅力的な仕事です。
大学、法科大学院における学費の負担の問題はありますが、少なくとも、司法試験合格後の経済的な負担は大きく軽減されました。経済的な理由だけで法曹への道をあきらめてしまうのは非常にもったいないので、是非この世界に興味をもっていただければと思います。
司法修習費用についてもっと知りたい方はこちらへ
裁判所WEBサイト 「司法修習生の修習資金の貸与等について」